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京都珈琲案内 第8回 確実な「美味しいペーパードリップの淹れ方」、教えます。―「間違い」だらけの珈琲の淹れ方―

 

 

これまでのコラムにて、最近京都でカフェが激増しており、かつ多種多様な珈琲を楽しむことができる旨を確認できた。実はその多くのカフェで豆自体を購入できるので、自宅で珈琲を楽しみたい人にとって、京都はこの上ない環境だ。他府県でも、京都ほど多種多様な珈琲豆を買うことができる地域はなかなかないであろう。

 

しかしその中で、「京都で様々な良質の豆を買うことができることは分かったが、そもそも自宅で美味しく珈琲を淹れるにはどうしたらよいのか」という声を数多くいただいた。確かに、前回のコラムでも述べたとおり、いくら美味しい珈琲豆を買っても、淹れ方が悪ければ元も子もない。そこで今回は、自宅で最もポピュラーな淹れ方である「ペーパードリップ」のコツについて、解説していきたいと思う。

 

ペーパードリップは、注意するべきところをちゃんと注意しておきさえすれば、ある程度のレベルの味に仕上げるのは実はさほど難しいことではない。しかも、その注意すべきところについても、その理由や理屈については比較的簡単なものだ。にもかかわらず、最近の本や雑誌などで、全く根拠のない間違った「美味しい珈琲の淹れ方」を見かけることが非常に多いのが現状である。

 

珈琲のドリップとは、「挽いた珈琲豆にお湯を通し、ろ過する」という作業だ。その中で、気にするべきポイントとしては、

 

① 挽く豆の量

②注ぐお湯の温度

③蒸らし

④お湯の注ぎ方 

 

実はこのたった4つなのだ。今回のコラムでは、私の視点から見て、本当に気を付けるべき(私自身もペーパードリップ抽出時に特に意識している)ポイントについて確認してゆく。

 

 

①挽く豆の量

 

杯分を淹れるには、どんな種類・深さの豆でも15gを使用するのがベターであろう。また、2杯以上を淹れる場合、私の場合は2杯分だと20g、3杯分だと25g、4杯分だと30g・・・と5gずつ足すことを目安にしている。一般的には1杯分で8~10gと言われているので、少し多いのではと感じるかもしれないが、この量にしているのには理由がある。この件については後ほど述べることにする。

 

なお、豆は挽いて約20秒で酸化が始まり、味が劣化していくので、豆を買う場合は挽いた豆を買うのではなく豆のまま購入し、抽出する直前に豆を挽くようにしたい。挽く豆の粗さについては基本的にはどんな珈琲豆でも中粗挽き、砂粒よりちょっと細かい程度の粗さで問題ない。

 

 

②注ぐお湯の温度

 

注ぐお湯の温度は、豆の焙煎の深さによって変わる。まず頭の片隅に入れておきたいのが、以下の法則だ。

 

■ 豆の焙煎が浅い=うま味が出にくく、雑味(苦味・えぐみ)も出にくい

■ 豆の焙煎が深い=うま味が出やすく、雑味(苦味・えぐみ)も出やすい

□ 注ぐお湯の温度が高い=うま味を出しやすく、雑味(苦味・えぐみ)も出しやすい

□ 注ぐお湯の温度が低い=うま味を出しにくく、雑味(苦味・えぐみ)も出しにくい

 

この法則の組み合わせパターンを考えてみると、浅い豆は高めの温度のお湯で、深い豆は低めの温度で注ぐほうがよい豆の深さとお湯の温度の組み合わせによって「うま味が最大限感じられ、かつ雑味が最小限に感じる絶妙なお湯の温度のポイント」が変わってくるのである。基準となる「中煎り」の豆でいうと、お湯の温度は約88度が望ましいと私は考えている。88度というと厳密すぎるのでは、と思うかもしれないが、やかんで沸騰させたお湯をドリップポットに1回移し替えて30秒~1分くらい経てばちょうどそのくらいの温度になる。深めの豆だと80~83度、浅めの豆だと88~90度くらいの温度で注ぐとよい。ただし、深煎り豆を低めの温度で抽出する際は、うま味が出にくいので使用する豆の量を少し増やす(17g程度)のがコツだ。

 

 

③蒸らし

 

実は、珈琲のドリップは、蒸らしがきちんとできたかどうかでほぼ100パーセント味が決まるといっても過言でもない。蒸らしという過程は、それほどに大切なものである。蒸らしとは、抽出前に珈琲の粉にお湯をかけ、蒸気で豆をふっくらとさせることだ。蒸らしをすることで豆は抽出モードに入る。この過程で大切なことは、「全体の豆の温度を一気に同時に上げる」ということだ。慎重になりすぎてちょろちょろと部分部分に少しずつお湯をかけている人が多いが、これでは蒸らしの意味が全くない。多少大胆に、サーバーに少しくらいお湯が垂れてしまっても構わない。全体に一気にさっとかけて一気に豆の温度を上げることが大切だ。

 

すると、お湯をかけて30秒くらいで豆の香りが大きく放たれ、豆がハンバーグのように膨らんでくる。これで蒸らしの工程は完了だ。

 

ちなみに、「豆が膨らめば膨らむほど美味しい証拠」という迷信が広まっているが、これは少し間違っている。豆が膨らむのは、豆がお湯に当たることで豆の中に含まれている炭酸ガスが放出されるからで、「新鮮な」証拠ではある。ただし、あくまで新鮮だという証拠であるだけで、それが必ずしも美味しいとは限らない。むしろ、豆をまとう炭酸ガスが壁になって、お湯が豆にしっかり当たることを阻害され、薄めの味に仕上がる傾向にあるため、新鮮な豆をドリップする場合は次の②で述べる内容をしっかり意識する必要がある。ちなみに、深煎りに焙煎し、1~2週間ほど寝かせた豆やオールドビーンズ(※注)などは、蒸らしてもほとんど膨らまない。でも、それゆえの美味しさとコクは筆舌に尽くしがたいものがある。これらを踏まえると、最近巷でよく言われる、「珈琲豆は焼き立て、新鮮なうちが美味しい」というのも、絶対そうだとは言えないこともこれでお分かりだろう。豆の膨らみはあくまでいちチェックにすぎないと認識いただきたい。ただし、保管が悪く酸化しきった豆は膨らまないし美味しくないことは言うまでもない。

 

※オールドビーンズ……収穫されてから長年倉庫で保管熟成させた生豆のこと。熟成期間としては3年という人もいれば10年という人もおり、厳密には定義されていない。水分が抜け黄色くなり、焙煎すると独特の香味が出るため、根強いファンが多い。残念ながら京都ではオールドビーンズを購入できる店はほとんどない。東京だと武蔵境にミネルヴァという名店があり、私はそこで買ったオールドビーンズをいくつか自宅で保管している。

 

 

④ お湯の注ぎ方

 

基本的には豆のみにお湯を通過させたいので、注ぐお湯の太さは細く、ゆっくりと注ぐことが鉄則である。豆にお湯を当てず、ペーパーフィルターにお湯を当ててしまうと珈琲が薄くなってしまう。そういう意味でも、やかんからお湯を注ぐのではなく、小さめのドリップポットからお湯を注ぐ必要が出てくる。

 

注ぎ方について、ここでかなり多くの方々が勘違いしていることだが、「大きく『の』の字を描きながらずっとお湯を注ぎ続ける」という行為は基本的には間違ったやり方だ。

 

「の」の字で注ぐのが一般化してしまったのは、大昔の珈琲のCMでそのような演出シーンがあったからと聞いているが、実際に初めからずっと「の」の字を描いてお湯を注ぎ続けると、必然とドリッパーの端の方にお湯を注いでしまうことになる。そうすると、前述の通り珈琲豆にお湯がきちんと当たらず、結果として薄い珈琲となってしまいがちになるのである。繰り返すが、珈琲のドリップとは「挽いた珈琲豆にお湯を通し、ろ過する」という作業だ。なので、注がれるお湯は上から下へ、最長距離で通過させたい。となると、挽いた豆が置かれているドリッパーを縦に切った断面図を頭の中で想像してほしい。上から下まで、一番長い距離でお湯を当てられるのは「中心部分」のみなのである。

 

 

真ん中の赤い点線が最長距離であることが分かる

 

つまり、お湯を注ぐ際は「ど真ん中、500円玉より少し大きい程度」の範囲をゆっくりゆっくり、お湯の勢いで真ん中が削られすぎないように豆の上にお湯を乗せていくイメージで注いでいくのが、確実に良い方法だと言える。少し勿体ないと思うかもしれないが、そのほうが確実に美味しくなるし、端の部分を「捨てている」ゆえ、豆の量を一般的に言われている量より増やしているのである。

 

ちなみに、ドリッパーにはカリタ式、メリタ式、コーノ式、ハリオ式など、いろいろなパターンがあるが、上記の抽出法を用いれば基本的にどのドリッパーを使っても問題はない。ただし、1杯を淹れるには1杯用の小さなドリッパー、3杯を淹れるには3杯用のドリッパーなど、杯数に合ったドリッパーを使うのが良い。5杯立て用の大きなドリッパーで1杯分を抽出しようと思っても、ドリッパーの大きさの割に豆の量が少なすぎるので、上から見てお湯を豆に当てられる面積が小さくなり、非常にお湯を注ぎ辛く、結果として薄い珈琲になりやすい。「1杯分を淹れるよりは3杯分を淹れたほうが美味しく(濃く)なる」という迷信をよく聞くが、それはおそらく普段使っているのが3杯立て用のドリッパーで、それで1杯分だけ淹れようとして失敗しているだけだ。1杯分のドリッパーを使い、正しく抽出すれば1杯でも充分に美味しく濃く抽出される。

 

これらを踏まえ、以下の手順でペーパードリップすることを薦めたい。

 

 

  1. (1)豆を挽き、ドリッパーにセットする。
  2. (2)やかんで沸騰させたお湯をドリップポットに移す。
  3. (3)ドリップポットからサーバーにお湯を注いでサーバーを温め、その後サーバーに注いだお湯を全てコーヒーカップに移し、コーヒーカップも温めておく。
  4. (4)サーバーの上にドリッパーをセットし、豆全体にお湯をかけ、豆を30秒ほど蒸らす。お湯をかけたときに、ちょっとくらいお湯がサーバーに落ちてしまっても問題はない。
  5. (5)中心部分のみ500円玉より少し大きいくらいの範囲をゆっくり細く細くお湯を注いでいく。ドリッパーにお湯が残っている状態であれば何回に分けて注いでもよい。ただし、湯の勢いで真ん中が削れすぎないように、お湯は豆の上に少しずつ載せていくイメージで注ぐこと。
  6. (6)130ccほど注げば、お湯がドリッパーから完全に落ちきる前にサーバーからドリッパーを外す。注ぎきった最後のほうお湯は基本的に雑味が多く混じりがちなので、充分にお湯がドリッパーに残っているうちにドリッパーを外すのがよい。
  7. (7)コーヒーカップのお湯を捨て、珈琲をカップに注ぐ。

 

なお、器具について、ミル、ドリッパー、サーバー、ドリップポットは必ず揃えておきたい。ミルは手動でも電動でも構わないし、ドリッパーとサーバーは前述の通りどの形式のものでも構わない。ドリップポットについては、初心者は小さめで口が細長いものがベターであろう。個人的には使い勝手がよく値段もリーズナブルな「月兎印スリムポット 0.7L」や「ユキワ 18-8 コーヒードリップポット 800cc」をお勧めしたい。なお、私は「タカヒロ コーヒードリップポット 雫 0.5L」を愛用している。

 

京都のカフェで広く好まれている珈琲豆の代表格は、WEEKENDERS COFFEE、CIRCUS COFFEE、CLAMP COFFEE SARASAあたりであろう。上記のポイントを意識しながらこれらのお店で好きな豆を買って、是非自宅で試してもらいたい。また、その豆を使っているカフェにまず行ってみるのもよいであろう。

 

CIRCUS COFFEE       

 

CLAMP COFFEE SARASA  

 

最近オープンしたお店でいうと、河原町丸太町にできた月兎耳(ツキトジ)がCLAMP COFFEE SARASAの豆を使用しており、ペーパードリップのお手本のようなバランスの良い濃さ、コクとキレがあった。また、このお店用にオリジナルブレンドされているのだが、インドが入っているからか、代表的なCLAMPの深さよりはやや深めである。それでもCLAMPの中煎り豆独特の香ばしい酸味は保たれているので、CLAMPの素晴らしさを充分に楽しめるので、是非お勧めしたい。

 

月兎耳

 

 

今回は、私がペーパードリップをする際に注意しているポイントとテクニックをご紹介した。これを参考に是非自宅での素敵な珈琲時間をより楽しんでいただければ幸いである。また、私が紹介した方法以外のアプローチで淹れる「正しい」ペーパードリップも確かに存在する。他のお店ではどのような淹れ方をしているか、比較観察するのも楽しいし、それを参考に自分の淹れ方にカスタムさせていくのも楽しい。このコラムが、こういった新しい珈琲ライフの楽しみ方ができる一助となることを私は願っている。

 

最後にこのコラム中のイラストをお忙しい中描いてくださった吉浦さんにはこの場を借りて感謝申し上げたい。

 

 

今回ご紹介したお店

 

CIRCUS COFFEE

住所:京都府京都市北区紫竹下緑町32番地

営業時間:10:00~18:00

定休日:日曜・祝日

 

CLAMP COFFEE SARASA

住所:京都府京都市中京区西ノ京職司町67-38 1F

営業時間:8:00~18:00

定休日:最終水曜日

 

月兎耳

住所:京都府京都市上京区新烏丸190 イストワール御所東1F

営業時間:12:00~21:00(月曜日のみ18:00まで)

定休日:不定休

 

 

【おしらせ】

私が三条木屋町アバンギルドで久々にソロライブをさせていただくことになりました。閑話休題の曲や新曲を含めてのステージです。なお、ライブ会場では、私が焙煎し、普段は会員限定で販売提供している深煎り自家焙煎珈琲「潤印珈琲豆」の販売も少量ながら行う予定です。ぜひお越しいただければと思いますのでよろしくお願いいたします。

 

『ランタンスパイスvol.15』

日時:7月7日(金)

時間:OPEN 19:00 / START 19:30

場所:三条木屋町UrBANGUILD (http://www.urbanguild.net/top.html)

出演:植島潤(from閑話休題) / 吉村かおり / 田渕直孝 / ミカミッヒ

入場料:前売 1,900円 / 当日 2,300円(+別途ドリンク代600円)

※チケット取り置きを希望される方は、UrBANGUILDまでご連絡をお願いいたします。

参照:閑話休題ウェブサイト

 

 

この記事を書いた人

植島 潤
植島 潤
京都のロックバンド、「閑話休題」のヴォーカル兼ギター。2016年1月から、惜しまれつつも活動休止中(現在、鍵盤のメンバーを募集中)。珈琲に結構くわしく、素人ながら自家焙煎やネルドリップ、ラテアートもこなす。日々の珈琲屋巡りやおうちカフェの様子を記録したブログは、京都を中心とする珈琲店や雑誌社などから一目置かれているらしい。でも当方はバンドのほうで注目されたいの。
photograph by Yonnn

【閑話休題Official Website】http://kanwakyudai.com
【京都珈琲案内】http://ueshima.blog.jp

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