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京都珈琲案内 第2回

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珈琲は「苦いもの」ではない-珈琲に対する誤解を、京都の珈琲で解く-
 
 
 
突然だが、皆さんは、「珈琲=苦いもの」と思ってはいないだろうか。

そして、「珈琲に酸味がある=まずい」と思ってはいないだろうか。

 
 

前回の寄稿で、「抽出法によって珈琲の味は大きく変わる」と述べたが、他に珈琲の味を変える大きな要素があと2つある。「豆の生産地」と「豆の焙煎具合」だ。



豆の生産地について、誤解を恐れずざっくり言うと、実は大きく分類して3つしかない。珈琲豆は、気候条件などの理由で、基本的には「赤道をはさんで北緯25度~南緯25度の間」の所でしか栽培することができない。世界地図を頭に思い浮かべてみれば何となくお分かりかと思うが、その付近の領域は、実はほとんどが海で、陸地があるのは「アフリカ」「東南アジア」「南米」くらいしかない。つまり、(あくまで誤解を恐れずざっくり言うと、)珈琲豆はこの3パターンしかないのである。 



珈琲の味の分類基準は様々あるが、専門的な知識がなくても直接舌で感じやすいのは「コク(深味・後味)」「酸味」の2つである。しかも、(これも誤解を恐れずざっくり言うと)前述の3パターンの豆には、おおよそ以下の通り比較的覚えやすい特徴がある。

 

 

①アフリカ付近  =酸味が豊か

②東南アジア付近 =コクが豊か

③南米付近    =酸味・コクともにバランスがいい
 
 

復唱するが、もちろん例外はいくつもある。ただカフェ巡りをする際には、この簡単な知識がこれからより珈琲のことが好きになっていく最初の地図となってくれることだろう。

 

ただしこれだけでは珈琲の味わいを確定することはできない。ここでもう一つの要素「豆の焙煎具合」の話が出てくるのである。

一番分かりやすい例は「ケニア」であろう。ケニアは元々、グレープフルーツのような分かりやすく鮮やかな酸味を持つ豆で、その酸味を楽しむために浅煎り~中煎り程度で焙煎されることが多い。また抽出法については、さっぱりとした味わいを活かすペーパードリップとの相性がとても良い上質のケニアの酸味を楽しむことができる京都の珈琲店といえば、「mag」「鳥ノ木珈琲」などが挙げられるだろう。

 

 

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▲mag

 

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▲鳥ノ木珈琲 

 

 

しかしこのケニアなのだが、深く焼いていくにつれ、その酸味は「甘味」へと変わっていくのである。

京都のお店だと以前「カフェ工船」でいただいたケニアが、キャラメルのような甘味が如実に感じられて衝撃を受けた記憶がある。なお深焼きのケニアは、よりこってりと甘味を味わえるネルドリップとの相性が良いようだ

 

ここでいよいよ冒頭の問いに触れる。まず珈琲豆は焙煎を深めるにつれ「酸味」が和らぎ「甘味」を増していく。しかしそれと同時に「炭」の要素も増してくるので「苦味」も強くなっていく。

ここで間違えてはいけないのが「『苦味』はあくまで『苦味』であり、『旨味』ではない」ということだ。

 

苦味はあくまで珈琲の甘味や香味を引き出すために生じる副産物なのである。

 

もちろん、苦味は珈琲にとって必要なものではある。たとえば、スイカに塩を振るとよりスイカが甘く感じるように、甘味の中に苦味を入れるとその甘味がよりはっきりと分かるようになるし、その「苦味」が「コク」へと間接的には繋がっていく。焙煎を深めるとある程度までコクは増していくと言って差し支えない。しかしながら、やはり苦味単体で考えるとそれは決して手放しで賛美されるべきものではない。

 

「苦い珈琲ほど美味しい」と言う人をたまに見かけるが、それはちょっと眉唾物だ。京都の珈琲店でいうならば「王田珈琲店」の超濃厚な「ブレンドデミタス」を是非飲んでいただきたい。超深焼きの豆を通常の数倍量使用し、エキスのみをネルで凝縮して抽出したその珈琲は、珈琲の持つ本当の甘味、喉を通った後に仄かに感じる酸味を究極的に楽しむことができる。この焙煎の深さ、この濃さにして、それでも珈琲は「苦いものではない」というのが分かっていただけるはずだ。



 

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▲カフェ工船

 

もう一つ、「珈琲の酸味が苦手だ」という人が多い。それは街中の喫茶店で飲んだ珈琲が酸っぱくて、それが口にずっと残って嫌だったという経験からくる人がほとんどであろう。しかしこれも誤解を受けないでほしいのだが、その酸味は元々珈琲に備わっている酸味ではない。適切に管理されていない豆が長期間空気に触れて劣化・酸化してしまい、それゆえに酸っぱくなってしまっているのである

珈琲の持つ本当の酸味は、口にいつまでも纏わりつくような嫌なものではない。時に苺のような、時に柑橘系のような、時に花のような、果実味の溢れる爽やかなものだ。また酸味は「存在感のある」コクとは違い、その存在は「軽やかに消えていく」ものである。それゆえに両極の対比として、お互いの良さを引き立たせる役割を担ったりもしている。

 

今回はちょっと先入観を覆すようなお話をさせていただいた。もし嘘だと思うならば、京都の街へ出かけて、上述にてご紹介したお店で一度確かめてみてほしい。そう思った時点で、京都での珈琲を求める素敵な旅はもう始まっているのだから。

 
 
 



【今回ご紹介したお店】

※今回ご紹介した珈琲は、レギュラーメニューでないものも含まれています。あしからず。

 

(1)mag(先斗町)

https://www.facebook.com/magcoffeemag

住所 京都府京都市中京区木屋町通四条上ル下樵木町191-3

営業時間 11:00~20:00

定休日 火曜日(祝日の際は営業)

 

(2)鳥ノ木珈琲(烏丸丸太町)

http://coffeeplease.jimdo.com/

住所 京都府京都市中京区夷川通東洞院東入る山中町542 モア御所南 1F

営業時間 9:00~18:00L.O.・19:00閉店

定休日 水曜日・第3日曜日

 

(3)FACTORY KAFE 工船(河原町今出川)

http://d.hatena.ne.jp/kafekosen/

住所 京都府京都市上京区河原町通今出川下ル梶井町448 清和テナントハウス2F G号室

営業時間 11:00~21:00

定休日 月曜日・火曜日(祝日は営業)

 

(4)自家焙煎 王田珈琲専門店(京都市役所前)

http://coffee-senmon.jugem.jp/

住所 京都府京都市中京区御幸町夷川上ル松本町575-2

営業時間 11:00~23:00(L.O.)

[金・土・祝前]11:00~24:00(L.O)

定休日 月曜(祝祭日の場合は営業)

 

 

 

著者関連リンク

 

【閑話休題Official Website】http://kanwakyudai.com

【京都珈琲案内】http://ueshima.blog.jp

 

 

Profile

植島 潤
植島 潤
京都のロックバンド、「閑話休題」のヴォーカル兼ギター。2016年1月から、惜しまれつつも活動休止中(現在、鍵盤のメンバーを募集中)。珈琲に結構くわしく、素人ながら自家焙煎やネルドリップ、ラテアートもこなす。日々の珈琲屋巡りやおうちカフェの様子を記録したブログは、京都を中心とする珈琲店や雑誌社などから一目置かれているらしい。でも当方はバンドのほうで注目されたいの。
photograph by Yonnn

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