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【座談会】働きながら音楽活動をする<京都編>  開催レポート・前編

 

5月に東京にて開催されたトークイベント『働きながら音楽活動をする』。満員御礼の中、実際にイベントに参加した人からの反響はもちろん、レポートが投稿されるやいなや各地からのレスポンスがたくさんありました。「仕事」と「音楽」……やっぱりみんな気になるところですよね。7月2日に開催されたアンテナ×STUDIO MONAKA共催イベント“Color of Yellow”にて『働きながらバンドをする』トークイベントの京都編を行いました。東京開催と同じく主催の鈴木哲也氏(oaqk / Penguin Market Records副代表 / ヤフー株式会社)、鳥居大氏(ATATA / 株式会社ウェブクルー)の2名に引き続きお越しいただき、京都からはbedの山口将司氏をお招きしてそれぞれの考える「仕事とバンド」についてお話いただきました。

 

 

 

主催者・鈴木哲也の場合

 

■主催者:鈴木哲也氏(oaqk / Penguin Market Records副代表 / ヤフー株式会社)

鈴木氏がなぜこの企画を始めたかについてはすでにアップ済みの記事参照。

http://kyoto-antenna.com/column/170630_hatarakinagara-kyoto/

 

 

「働きながら」を前提に組んだバンド

 

 

 

 

自分も元々、バンドをやるにはフリーターしかないと思っていて「正社員として働きながら」という考えは選択肢にはありませんでした。なぜかというと周りのバンドも「30歳になるまでは好きなようにやらしてよ」とフリーターでデビューを目指すバンドが多かったから。じゃあいざ自分が30歳になった時のことを考え、どうしようかと考えたときに「やっぱりバンドを続けていたい!」って思ったんですよね。そこで働きながらお給料をもらうことで、安定してバンドをすることができないのか……と考え始めました。そう思って調べてみると、実はもう”働きながらライブをするバンド”の事例がたくさんあったんですよね。特に海外では働きながら・何かをしながらというバンドは多い。

 

 

そう思って、働きながら続けるということを前提にバンドを組みました。メンバー全員が最初はHMVで働いていたため、幸い音楽をやることへの理解がある環境……業務に支障をきたさなければやっていける、というところで結成されたのがoaqk。そこで決めたルールは2つ。

 

 

oaqkのバンド運営ルール

 

① バンドが最優先じゃなくてもいい。

家庭や仕事を優先して考える。バンドが一番!だった頃はスタジオの予定が合わないとかで「やる気ないんじゃないの」なんてよく揉めたけど、これを決めてからは揉めることも少なくなった。


②「バンドを辞めなければ」という考えを辞める。

やれるときにしっかりやって、それで続けていければよい。「休止」「解散」と決めてしまわなくても、もっとゆるい感じで続けていってもいいんじゃないか。

 

 

 

この座談会の全てに同意して欲しいわけではないし、「こういうやり方もあるんだ」と伝えたいだけ

 

 

 

これまで一緒に歩んできたバンドはたくさんいたけど、どんどんと辞めてしまった。「就職することが中途半端でかっこ悪い」という風潮が少なくともシーンによってはあると感じているけれど、そういった白黒つかないグレーの状態でも”続ける”という選択肢は大事だと思っています。そこで自分は「働きながら音楽を続ける」メリットを考えてみました。

 

 

「働きながら音楽を続ける」メリット

 

①息長く続けることができる。

30歳40歳になっても音楽やライブを続けていけることって大事じゃないでしょうか。

 

②売れるため、食べていくために音楽性を変える必要もない。

もちろんすべてのバンドに当てはまる訳ではないが、売れたバンドやメジャーに行ったバンドの中にはこういったことに悩むケースもあるんじゃないかと。

 

③自分が働いて稼いだお金で自分自身をプロデュースできる。

バンドの初期は企画ひとつするにしてもお金がないから生活に響いてしまう。ひやひやしますよね。僕もそうでしたが、今はある程度余裕もできているので、その分自分の活動やバンドに対して考えて面白い仕掛けを打てるようになった。

 

 

こういう人が増えると多種多様なアーティストの増加、ニッチな音楽シーンの活性化にも繋がるのではないかと思っています。自分自身のやりたいことを突き詰められる人が増えて、続けていくことで成熟するものもあるんじゃないかな。

 

 

そして今まで音楽を辞めてしまった人がひとりでも多く続けてくれていれば、日本のバンドの数自体ももっともっと増える。バンドを辞める人をひとりでも少なくする、というのが僕の目標なので、僕の周りでバンドを辞めるか悩んでいる人には話をしたいし、こういった座談会で一人でも悩んでいる人がバンドを続けるきっかけになればと思っています。今日は鳥居さん、山口さんのお二人に登壇していただくのですが、彼らの考えに全てに納得してほしい訳ではなくて、こういうやり方もあるんだよという選択肢として、バンドメンバーと話すきっかけなんかになれば。ゆるい気持ちで聞いてもらえれば嬉しいです。

 

 

 

鳥居大(ATATA)の場合

 

 

■鳥居大氏(ATATA / 株式会社ウェブクルー)

東京編のトークレポート(http://workxband.hatenablog.com/entry/20170525work_band03

 

 

 

 

「仕事とバンド」のトークイベントをする意味

 

 

 

 

ATATAは結成7年目の6人組バンドで、全員がそれぞれサラリーマンとして働いています。僕の仕事は株式会社ウェブクルーという会社で、デザイン部署の責任者と新規事業立ち上げのまとめ役なんかに関わっています。2か月前ぐらい前に東京で「働きながら音楽活動をやる」座談会の第一回目をやったんですけど、そのときの印象を振り返るとやはり今までこういう話をする場が少なかったんだなと。今まではそれこそ現場、ライブの打ち上げ、それも一部の中でしか行われてこなかった。しかもバンドだけやっている人・仕事だけやっている人、ではなかなかこの話題にはならないので、第一回目の座談会が終わったときは参加した人からも独特のグルーヴみたいなものが生まれていましたね。今日登壇している鈴木さん、山口さん、僕、それぞれやっている仕事も違うので、もっといろんな人がいろんな場所で勝手にやってくれればいいなと思っています。

 

 

前回の座談会を終えて、改めて考えてみたんですよ、一体この話を誰に伝えたいのか。一番は昔の自分と同じような状況にいる人に、ですね。もちろん人によって人生において何が幸せなのか、定義が異なってくる訳です。お金が大事なのか、時間が大事なのか……だから決して僕の仕事観を押し付けるわけではないというのが前提です。

 

 

 

仕事しながらバンドするのはださいって思っていた

 

 

「働きながら音楽活動できるの?」という結論から行くとそれは皆さん分かっていると思いますが、できます。ただそれをどういうスタンスで僕がやってきたのかっていう経験を話させていただきます。

 

 

昔は自分もすべてのアイデンティティがバンドの人間でした。19歳でバンドで食おうと思って静岡から上京。バンドにフルコミットしたかったので、アルバイトをしてました。21歳で年間120本ライブ、しかし年収は56万円……。この時期、僕は働きながらバンドをする=仕事に逃げている!音楽に本気じゃない!ダサい!と思っていました。家族や彼女よりもバンドを優先させていたし、メンバーに対してもバンド以外の用事でスタジオに入れないなんて理由はナシでしょと。

 

 

その後25歳でフルアルバムをリリースするも半年で廃盤、すでに借金は300万円。しかも毎月8万円返済しても一向に元金は減らない。このままじゃヤバイと思って時給のいいweb系バイトを探して「コードかけます!フォトショ触れます!」って嘘ついて合格。このバイトが一つの転機になって、最初はお金のためだけに働いていたんだけど、仕事を通じて感じたのが「できなかったことができるようになるのって面白い」ってこと。この感覚ってバンドにも通ずるものがあるなって思えたんですよね。どうせだったら仕事でも”鳥居大”という人間がちゃんと認められるようにやりたいと思って、そのままweb関係の会社に28歳で初めて就職したって流れです。

 

 

 

 

 

28歳でやっと就職

 

 

人より遅かったのでとにかくなんでもやりました。デザイン業務で入社したけど営業もやったし、外部ディレクションもやった。そんな中でバンドの経験を仕事に活かせたなって思うところもあります。

 

 

①本気でやるということ

年収50万円で地方にライブ行ったり、何がなんでもバンドを最優先したり履き違えている部分はあったと思うんですけど、本気でやっているのには間違いなかったですね。

 

②組織の中で動くということ

バンドって組織なんですよね。ひとつの楽曲に対してみんなで作っていくこととか、会社の在り方に似てるなって働き始めてから思いました。


③細かいところへのこだわり

僕は曲も作っていて。リスナーからしたら気にしてなくない?みたいな細かいところまで常にこだわってしまっていた部分はあったので、そういう性格は仕事にも活かされているなと感じます。

 

④他人任せではなく”自分でやる”ということ

もちろんバンドは自分たちの力でやっていたので、何事も自分たちが何かしなければ何も動かないということを知っていました。

 

 

昔は”バンド”と”仕事”って分けて考えていて、バンド=アイデンティティ/ 仕事=生きていく手段に過ぎないと思っていました。今はバンドと仕事っていうのが密接に絡み合っていて、いろんな出会いや手法をどちらでも体験することができるなと感じています。

 

 

 

それぞれに合ったやり方を見つけてほしい

 

 

正直、先を見据えて早めに就職してバンドを続けるための基盤を作ってしまうのも良いと思うけど、僕みたいにバンドだけやり続けて、遅くに就職しても全然構わないと思う。僕はそれでなんとなったので。今、本当にバンドを本気でやりたいのならやったらいいと思うし、バンドを本気で出来るやつって仕事もできるやつが多いと思っているので。バンドマン原理主義みたいなものかもしれませんが (笑) 。なので、それぞれが続けられる方法っていうのを見つけ出して欲しいな。

 

 

 

 

後編へ続く

 

 

 

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この記事を書いた人

山田 和季
山田 和季
チーフエディター。 (頭が悪いから) 歯に衣着せぬ物言いで、最近は「めたくそライター」の肩書もGETしました。ふざけただらしのない文章を好みます。母の鳴く家というバンドで紅一点ギターを弾いていますが、わりと常にエロいことを考えています。

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