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川端安里人のシネマジプシー vol.1 『ゼイリブ』

シネマジプシー
 
 
 
初めまして!川端安里人です。普段はレンタルビデオ屋のバイトやら記録撮影やらやってますが、今まで12000本以上見てきた映画の知識を活かす場所を求めて、この度アンテナでコラムの連載をさせてもらうことになりました。このコラム、シネマジプシーでは古今東西ありとあらゆる良い映画を求めてさすらうシネマジプシーとして、月一本目安で自分イチオシの映画を紹介します!今回は幼い自分に影響を与えまくったジョン・カーペンター監督のカルト的SFアクション「ゼイリブ」を紹介します。

 

 

ゼイリブ 通常版 [Blu-ray]

 

 

「ゼイリブ」、奴らは生きている、もしくは奴らは暮らしているというタイトル。内容も極めてシンプルなもので、流れ者のホームレスである我らが主人公ネイダが、いつの間にやら権力やメディアを手中に収めていたエイリアンを見分けるサングラスを手に入れ、一人戦い始める。この映画、実はアメリカでは結構メジャーな映画で、特に今年逝去された主演のロディ・パイパーが相棒役のキース・デイヴィッドとサングラスをかけるかけないで7分ほど喧嘩するシーンなどはアニメ「サウスパーク」でパロディ化されるほど。
 
 

さて、もしあなたがこの映画を観て格闘シーンが無駄に長い“ただの”B級SFアクション映画だと思うなら、あなたは幸せ者かもしれない。なぜならあなたは“眠っている”からである。

 

 

もちろん、この映画は物語の13分の1を割くほどの長い格闘シーンのある、対エイリアンのSFアクション映画でもある。だがそれ以上に我々が住む資本主義社会や、ものの質に関係なく何億円ものお金が動く広告至上主義社会へのカリカチュアであるのは一目瞭然だ。ネイダが初めて宇宙人と彼らのプロパガンダを見分けれるサングラスをかけるシーンが非常にわかりやすいのでいくつかポイントを抜粋すると、サングラス越しに紙幣を見れば「これはお前の神だ」と書いてあるし、街中の看板を見れば「消費しろ」だの「従え」だの書いてある。このように「ゼイリブ」がいかにイデオロギーの問題を比喩的に伝えているかに関してはスロベニアの哲学者、評論家であるスラヴォイ・ジジェクが出演する「倒錯的イデオロギーガイド」という映画でわかりやす~く解説しているので、もし機会があれば是非見て欲しい。

 

 

ゼイリブ画像1

↑色眼鏡使用前(左)使用後(右)

 

 

さてさて、上で書いたことは、ゼイリブファンにとっては当たり前のこと。つまりどう言うことかというと、傑作ドキュメンタリー映画「ザ・コーポレーション」を引き合いに出すまでもなく資本主義社会そのもの、もしくはその社会ピラミッドの上にいる人たちは消費者(=我々)の思考、イデオロギーなどいらず、ただただその社会の思うように動いてくれればいい(=眠りながら動くゾンビのような)奴隷としか考えていないサイコパスであり、我々はいい加減それに“KICK-ASS”しなければならないということだ。

 

 

それともうひとつ、最近この映画を引き合いに特定の人種や国を侮蔑するコメントをインターネットの海でたまに眼にするのだが、僕はそれにも「NO」と言いたい。この映画はネイダ(スペイン語で無という意味)が資本主義、新自由主義の金の亡者たちに反抗する、つまり持たざるものが持てるものに刃向かう物語であり、そのためには自分自身の視座(サングラス)で(自分の所属する)世界を冷静に見直す必要があるという映画なのだ。つまり右でも左でも、人間性や個性を消し去る(宇宙人にしてしまう)プロパガンダというものは、「気にくわねぇ」という極めてアナーキーな映画なので、この映画を語る中で特定のナショナリズム、イデオロギーの正当性をごり押しするのは宇宙人と何も変わらないからナンセンスだと自分は言いたい。

 

 


↑カーペンターを知るならこの一冊

 
 

カーペンターって誰だよという若い人の為に、改めて簡単に説明をする必要があるのかもしれない。ジョン・カーペンター、例え彼の名前を知らなくても彼の監督した映画作品の影響下にある作品なら聞いたことがあるはずだ。日本人に取って馴染み深いのは、人気ゲームシリーズ「メタルギアソリッド」のキャラクターたち。特に主人公のスネークは、若き日のジェームズ・キャメロンが特撮技師として参加していた「ニューヨーク1997」の主人公スネーク・プリスキンの影響をモロに受けているし、あまり言及されることはないが92年の「透明人間」におけるブルーバックを用いた特撮手法は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でも使われているなど文化面、技術面に多大な影響を与えている人なのだ。 

 

 



Lost Themes

 

 

最後に、間も無く終わろうとしている2015年は彼のファンにとってカーペンターソロミュージシャンデビューという衝撃の一年だったと思う。二月に突然“67歳の新人ソロミュージシャン”としてデビューし、そのアルバム「Lost Themes」ではデビューアルバムでありながらも10代の頃に僕を映画の渦に巻き込んだ彼の傑作群を思い出させる懐かしい響きを聴かせてくれた。さらに11月には「Lost Themes Remixed」が発売された。音楽にはさして詳しくない僕だが「Lost Themes Remixed」ではゾーラ・ジーザスといった有力な若手からJ.G.Thirlwell(フィータ!!)といったベテランまで様々なアーティストによるリミックスによってダークでありながらも非常に聴きやすい、クールなアルバムに仕上がっている。

 
 

おそらく直接の関係はないと思うが、カーペンター監督、日本に遊びに行った息子の影響でAKBにハマったらしい。どうやらサングラスがいるのは僕たちだけではないようだ。監督!音楽もいいですけどサングラスを掛けて今一度最高にクールな映画を撮ってくれませんかね?
 
 

Profile

川端 安里人
川端 安里人
1988年京都生まれ

小学校の頃、家から歩いて1分の所にレンタルビデオ屋がオープンしたのがきっかけでどっぷり映画にはまり、以降青春時代の全てを映画鑑賞に捧げる。2010年京都造形芸術大学映像コース卒業。

在学中、今まで見た映画の数が一万本を超えたのを期に数えるのをやめる。以降良い映画と映画の知識を発散できる場所を求め映画ジプシーとなる。

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