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「バンドを辞める人を1人でも減らしたい」–そんな想いから生まれた“【座談会】働きながら音楽活動をする”とは?

2017.06.30

岡安 いつ美岡安 いつ美

「働きながら音楽活動をする」。
このインパクトあるイベント名、最近見かけた方も多いのではないでしょうか?先日東京で行われたこのイベントのレポート記事がアップされ、瞬く間に大拡散、さまざまな論争がSNS上で繰り広げられていました。

 

 

この「働きながら音楽活動をする」というイベントはサラリーマンバンドマンが集まり「どのように働きながら音楽活動」をするかの経験や知見をシェアしたイベント。東京編には鳥居 大氏(ATATA)、小川 保幸氏( DEEPSLAUTER)、上杉 隆史氏(Endzweck)の年間数十本ライブをこなす猛者3名が登壇し、レコーディングや海外ツアー、日々のライブなどをどうやって働きながらこなしているのかをプレゼンしました。イベント終了後の懇親会では名刺交換会になったとか。このイベントを通し、新しいコミュニティが形成された瞬間だったに違いありません。

 

 

さて、このイベント一体どんな人が主催しているのでしょうか?「なぜ」このイベントをやろうと思ったのか。そんな経緯を伺いたく、今回アンテナではインタビューを敢行しました。

鈴木哲也
oaqk/Penguin Market Records副代表/ ヤフー株式会社 / 「働きながら音楽活動をする」主催・モデレーター

 

2002年にバンドoaqkを結成。human highway recordsのコンピレーション「THE MIXING OF LANDSCAPE」へ参加。その後Penguin Market Recordsからアルバム「Munchen」をリリース。2017年からはPenguin Market Records副代表も務める。
個人としては「TOHOKU JAM」「PARKROCK ISHINOMAKI」「結いのおと」「音つなぎアコースティックフェス」などの各地の音楽フェス企画運営にたずさわる。
HMVジャパン株式会社(株式会社ローソンHMVエンタテイメント)を経てヤフー株式会社に入社。

どうやったらバンド辞めさせずに済むかをずっと考えている

ーー改めてこのイベントを始めた経緯を教えてください。

 

 

元々「働きながらバンドやっちゃダメなのかな」っていう疑問がずっとあったんです。僕が若い頃パンク・メロコアバンドにあこがれて活動をしていて、働きながらバンドやるのは『格好悪い』『逃げ』という風潮があったんですよ。でもバイトしながらバンドを続けていた仲間たちはバンドを辞めていく。そんな状況がどうにかならないのかなと考えていました。

 

 

ーー界隈特有な感じもしますね。

 

 

パンク・メロコア界隈は特に全国ツアーして、ライブをたくさんやってお客さんをつけて、メジャーデビューするぞ!みたいなスタイルのバンドが多くて。それを見ていた僕はそもそも『働きながら』って選択肢すら、頭になかったです。

 

 

ーーなるほど。

 

 

あとはバンドを続けるためには、お金が必要だと気づく瞬間があるんですよね。それで揉める。音楽の部分熱く揉めるならまだ良いですが、本来揉めるべき場所じゃないところでパワーを使って、すり減っていくわけです。そういう悪循環に対しての解決方法がないかなと思ったことが、今回のイベントを始めるきっかけの1つになったと思っています。

 

 

ーー自身の経験からの問題定義がイベント開催へと繋がったわけですね。

 

 

はい。「食っていけない」「辛い」「親が」「結婚が」「家族が」等々の理由でバンドを辞める人が多いのです。そういう状況でどうしても仕方ないことも多いのですが、でもある程度収入がある仕事をしていたら、クリアできることも実はあって、バンドを辞めずに済む、続けることができる。歳を追うごとにそういったスタイルでバンドを続けている人にも出会えるようになって。そんな話を今のバンドメンバーや、近しいバンドとするようになったんです。

 

話してみると実はみんな長いこと……期間にしたら5〜10年程もんもんと悩んでいたことがわかったんですよ。バンドとして売れるためにはドサ廻りして当たり前ということへの疑問が。今になれば働きながらでも、かなりの本数ライブすることはできる。でも手がかりやヒントがなければ、そのことに気付くことすらできないじゃないですか。若ければ特にそう。

 

そんなもんもんとした時代の体験や想いを僕らが発信することで当たり前だと思っていることが「実は他にも手段がある」って気づけると思うし、僕らが過ごしたもんもんとした5〜10年をかけずともそのことに気づいて、新しい境地に行けるバンドがもっと増えればいいと。

 

 

ーー実際に東京編のイベントを開催していかがでしたか。

 

 

「僕もバンドをやりながら働いてるんです」って人が多く集まりましたね。「バンドを続けながら働いているのですが、このまま続くのでしょうか……」という人や、バリバリバンドをやっている人、このタイプに二極化していました。前者の「このまま続くのでしょうか……」っていう人は解決回答が欲しいって感じでしたね。後者については、自分が実践しているやり方以外にいい方法があれば試したいって人が多かったかな。

 

あと、公開したときのtwitterなどSNSでの反響はものすごくあって、1日目で4万アクセスいきました。twitterでの意見もかなり投稿されていて、それを登壇してくれた3人と見ながらいろいろ話していました。好意的な反応9割、否定的な反応1割という比率で、否定的の中には、レポートの1単語とか1文だけをとって拒否反応をおこしているかたもいらっしゃって、「趣旨を正しく伝える」と「飽きさせないような構成にして読んでもらう」のバランスが難しいなと感じました。
また、否定的な意見の中にも、しっかりレポートを読んでくださった上で自分の考えを述べておられる方もいて、そこに関しては心に染みました。

 

この活動では全員が同じ考えになって欲しいというわけではなく、このテーマを考えるきっかけになってもらえれば、ということでやっています。

東京編開催時の模様

ーーここまでの話を聞いて気になったのですが、東京のバンドマンって正社員しながらバンドやっている人ってそんなに少ないんですか……。京都には結構いるかと思っているのですが。

 

 

これはあくまでも僕の場合ですが、普段なんの仕事をしているかと、まず質問しないんですよ。

 

 

ーーそういう話にならない、ってことでしょうか……?

 

 

基本的にはそうですね。打ち上げでもどんな音楽を聞いて、どうやって曲作っているのかとか音楽の話に終始していて。なんなら僕は、他のバンドマンに仕事を聞くことがタブーであるとすら思っていて。みんな聞かれても言いたくないだろうな、ってなんとなく思っていたんです。もちろん何回も対バンして仲良くなったバンドとはするようになりましたが。

 

 

ーータブーとは驚きです。

 

 

京都ではみなさん自分がどんな仕事をしているか話したりされますか?

 

 

ーーそうですね、実際私の周りには働きながらバンドをしている人も多くて。スーツで仕事終わりにライブしにくる人もいます。中には「バンドで売れたいから、チャレンジするために東京へ行く」っていう人もいるんですよ。売れたいから東京へ行く、って考えをもったバンドマンとかはなかなか「働きながら」ってところにシフトするのは難しいんじゃないかなあ、と安直に考えたりしていました。

 

 

もちろんそういう人は東京に多いですよね。音楽が好きで、音楽で食っていくことが叶うことがミュージシャンとしてのゴールの形の一つであることは間違いない。もちろんそれは否定しないし、音楽だけで食べられている人を僕は素晴らしいと思ってます。ここは誤解されたくないので強調しておきます。

 

でもそこに「働きながら」っていう選択肢があることを、僕は示したいと思っていて。

 

音楽で売れることを志して、何かしらの理由で辞めるという選択肢が頭をちらついたときに、手段として考えてもらいたいというか。辞める一歩手前に、両立するというパターンもありなんだよ、ってことを伝えたいと思っていたんです。辞めていく人を、どうやったらバンド辞めさせずに済むかをずっと考えていると思います。

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